◆鳳声集(同人)秀句
◆鳳声集(同人)秀句
花野行くみちづれは亡き人ばかり 比田 誠子
若きらの路上ダンスや木の実落つ 鈴木 綾子
七歳の乗馬体験秋高し 相川 幸代
朱の橋を映して水の澄みにけり 不破 秀介
星飛ぶや人類未だ目覚めざる 北川 玉樹
花野道手にオカリナとハーモニカ 村田美穂子
藁塚組む自然農法守り継ぎ 平野きらら
ニューヨークに那覇に句友のゐる良夜 楢崎美和子
露けしや鉛筆書きの母の遺書 谷口 裕
校歌碑に地震の亀裂や鵙猛る 荒木 民子
命守ること教はりぬ震災忌 井上 進
顔寄せて露草愛づる朝かな 内田 和韻
植木屋の帰りし庭に小鳥かな 海瀬多寿子
こほろぎと始発電車を待ちにけり 遠藤 千波
うそ寒や忘れて仕舞ふしまひ場所 大塚 初江
天井が子規の大空梨を食む 大橋 紫
子の生れし産院跡地きりぎりす 岡林 稲甫
スーパームーン愛で虫の音の中にをり 小野寺 靖
この名月病みゐる兄よ見てをるか 甲斐よしあき
台風過瓦礫の中の三輪車 木下 涼薫
眠る子に籠のこほろぎ鳴きはじむ 汲田 泉
通学路案山子も学生服を着て 斎須 祥子
取り崩す実家に古き木守柿 斉藤 明子
境内の隅に一畝秋なすび 斎藤ひでを
顕彰碑菊挿す媼ゐてうれし 佐野 益子
身に入むや福竜丸の展示室 白田 道子
勝海舟終焉の地や草の花 杉江 美枝
露けしやランプの宿の窓明り 髙宮 義治
廃窯の高き煙突鳥渡る 武田 眞砂
イカーの声高らかにお花畑 中浦ミヱ子
木も雲も映る水面や秋澄めり 橋本 幸子
健やかに一人暮しの良夜かな 浜 和佳子
星月夜魔女になりたき女の子 原 ヤス子
柿かじる山家育ちの子に戻り 原田 香伯
朝寒や手押し車の野菜売り 細川 房代
検潮所桜紅葉の中にあり 堀木 基之
む水にゾーリンゲンのナイフ研ぐ 増田まゆみ
の空明日へ繋ぐフィットネス 三上 繁夫
鬼灯を鳴らす卒寿の少女かな 宮島ひろ子
台風来北斎の波引き連れて 森 道隆
思ひ出が思ひ出を呼ぶ零余子飯 安室 敏江
新酒酌む土間広かりし暗かりし 山本あかね
百歳の作る餅菓子水澄めり 脇田躍志朗
◆百鳥集(会員)巻頭句と選評
鹿寄せのホルンで目覚む旅の宿 豊田 昌代
「鹿寄せのホルン」で目覚めるとは如何にも旅の宿らしい。この宿は奈良公園の近くにある宿、豊田さんは早速鹿を見に行かれたのだろう。奈良公園に隣接する飛火野でホルンを吹くと、音色に誘われて鹿が森の中から駆け出してくる。この情景は奈良の風物詩としてよく知られている。
茶粥待つ旅人へ鹿擦り寄りぬ 昌代
奈良と言えば「鹿」が有名だが「茶粥」もまた知る人ぞ知る奈良の郷土料理、奈良観光に訪れたら一度は食べてみたい名物料理と言われる。その茶粥が食べられる店が奈良公園の周辺には何軒もある。
上の2句は先月(9月)の奈良吟行会での作。私は「鹿寄せ」の句を特選に頂戴し、「茶粥」の句と「地蔵尊相寄る寺や彼岸花」「軒先の身代り猿へ秋の風」「小豆売る鵲町の奈良格子」の4句を佳作に頂いた。因みに、豊田昌代さんは奈良県北葛城郡広陵町にお住まいである。(大串章)
◆今月の主な内容
◆山河逍遥(178) ―大串章の一句― 〔主宰作品鑑賞〕……… 北川玉樹
◆今月の名句 〔秀句抄出〕 ……………………………………… 中村昭義抽
◆「案山子」〔主宰作品〕 ……………………………………………… 大串章
◆鳳声集(一)〔同人作品〕(自選)
◆鳳声集(二)〔同人作品〕(主宰選)
◆鳳声集秀句 ………………………………………………………… 大串章推薦
◆百鳥作品評 〔主宰・同人作品鑑賞―10月号〕 ……………… 甲斐由起子(「天為」)
《年間展望》
鳳声集 ア行~サ行 風切る羽に耳澄ます …………………… 宮沢美和子
鳳声集 タ行~ワ行 まだまだこれから ………………………… 中山世一
百鳥集 ア行~サ行 大きな力 …………………………………… 髙橋喜和
百鳥集 タ行~ワ行 俳句のある暮し …………………………… 遠藤千波
◆2か月競詠 〔特別作品〕 ………………………… 岡野かんな・荻原葉月
競詠評 …………………………………………………………… 平田倫子
◆現代俳句月評〔総合誌掲載作品鑑賞〕 …………………………… 川原瀞秋
◆今月の本棚 〔書評〕池田澄子句集『月と書く』 …………… 杉山みゆき
◆探鳥1 〔同人作品鑑賞 ―10月号〕 ………………… 鈴木綾子
◆探鳥2 〔雑詠5句欄鑑賞 ―10月号〕 ………………… 江坂衣代
◆探鳥3 〔雑詠2・3・4句欄鑑賞―10月号〕 …………………… 谷口裕
◆飛鳥集 〔テーマ別募集作品 ― 息白し〕 ………………… 岩谷塵外選
◆私の好きな季語(108) ― 紙漉き …………………………… 中浦ミヱ子
◆失敗しない文語文法(60) ……………………………………… 楢崎美和子
◆百鳥集 〔雑詠〕 …………………………………………………… 大串章選
◆百鳥の俳句〔雑詠選評〕 ……………………………………………… 大串章
◆12月号句会案内