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◆鳳声集(同人)秀句

◆鳳声集(同人)秀句

庭石の苔あをあをと冬に入る      甲斐 遊糸

着ぶくれて我が青春の上野駅      鈴木 綾子

藩主の墓殉死者の墓冬落暉       平岡千代子

人力車の赤き膝掛け飛火野へ      徳永 真弓

冬紅葉降り敷く中を鼓笛隊       相川 幸代

寺の名を町の名にして冬ぬくし     不破 秀介

枯蟷螂即身仏になる積り        酒井 康正

枕元に星の王子やクリスマス      安宅 弘子

卒寿過ぐまだ先あると日記買ふ     井口三千子

山茶花に引越しの荷の止まりたる    石川喜代美

僧の子も禰宜の子もゐてクリスマス   岩谷 塵外

亡き夫と亡き子にともす聖夜の灯    海瀬多寿子

夫卒寿五年日記を買ふといふ      大塚 初江

清流に沿ふ街道や冬紅葉        甲斐ゆき子

足もとに荷物マフラー巻き直す     菅野 啓子

大掃除終りしあとの柚子湯かな     古賀勇理央

冬薔薇や三十路に嫁ぎ二児の母     小儀 洋子

山眠るトンネル多きローカル線     小林とみゑ

冬空や屋根に対峙の鴟尾光る      小林  烈

年の瀬や過ぎて知るわが誕生日     後藤 雅夫

父の背に眠つて帰る七五三       斉藤はるい

鳥の罠しかけし媼日向ぼこ       三遊亭圓馬

凍星や事故の辺に置くぬひぐるみ    重岡 藍玉

開戦日レノン忌母の忌なりけり     杉江 美枝

正門に子等松校長息白し        瀬崎 憲子

やはらかく語る媼や日向ぼこ      芹澤真紀子

幼子の抱く遺影や冬ざくら       谷口  裕

終点の線路の先の実南天        中島 瑞枝

降りしきる雪の真中の八一歌碑     中島 伸也

縁先に猫の寛ぐ漱石忌         長江 英子

冬の星陸路海路と乗り継ぎて      西口 麻里

冬桜まで車椅子押してゆく       橋本 幸子

大焚火燃え尽き神楽果てにけり     羽嶋 小鼓

雪囲ひして人住まぬ生家かな      長谷川久美子

御積りはいつもの地酒年の暮      林 喜久子

冬虹のたもと目指せば失せにけり    藤井智恵子

着ぶくれて寺の戸締り確認す      細川 房代

開戦日父の写真の色褪せず       宮城  章

閉ぢられて襖の海の広がりぬ      宮島ひろ子

虎落笛闇に学徒の叫びあり       武藤 洋一

湯豆腐や昆布褥にゆらゆらと      森 加名恵

ならまちの空屋の庭の実千両      山下 明宏

北の果旅愁を誘ふ暖炉の火       山西 貞子

ふるさとの海苔の香に年惜しみけり   渡辺 孝子

◆百鳥集(会員)巻頭句と選評

  癌を病み殊に愛しき冬すみれ  藤嶋やんま

 春や夏に比べると冬咲く花は少ない。草枯れの野道を歩いていて冬菫など見かけると思わず立ち止ってしまう。そしてしばらく見入ってしまう。冬に咲く花はどこか健気で愛らしい。小さな花の命のたくましさを思わせる。この句、冒頭に「癌を病み」と据え「殊に愛しき」と続けたところが心にひびく。自らの命を思い、冬菫の命を思う作者の姿が目に浮かぶ。

 今月の藤嶋さんの句は「闘病といふ戦あり冬館」「咳をして疼く傷口癌病棟」など病に関わる句が続くが、最後に次の句が出て来る。

  杖を突く予後のリハビリ冬雲雀同

 この句を読んで私は嘗て朝日俳壇で頂戴した藤嶋さんの句を思い出した。

  時雨忌や命の限り万歩計    藤嶋やんま

 2017年11月6日の朝日俳壇で頂いた句である。この2句、特に関係はないが、併せて読むとひたすら道を歩き続ける藤嶋さんの姿が彷彿とする。この道は藤嶋さんの人生の道であると共に俳句の道でもあるのだ。「時雨忌」がそう思わせる。(大串章)

◆今月の主な内容

◆山河逍遥(157) ―大串章の一句― 〔主宰作品鑑賞〕 ……… 北川玉樹

◆今月の名句 〔秀句抄出〕 ……………………………………… 森賀まり抽

◆「凍て蝶」〔主宰作品〕 ……………………………………………… 大串章

◆鳳声集(一)〔同人作品〕(自選)
◆鳳声集(二)〔同人作品〕(主宰選)
◆鳳声集秀句 ………………………………………………………… 大串章推薦

◆こんにちは 〔新同人紹介〕 ……………………… 大野宥之介・裏山綾子

◆私の好きな季語(87)― 啓蟄 ……………………………………… 杉好恵

◆失敗しない文語文法(39) ……………………………………… 楢崎美和子

◆百鳥作品評 〔主宰・同人作品鑑賞―1月号〕…………………… 浅井民子(「帆」)

◆自句のほとり(159・160)〔同人自句自解〕 ……… 山野静恵・大隈恭子

◎第28回鳳声賞受賞者小論 ―― 楢崎美和子小論 ……………… 中山奈々
◎第28回鳳声賞受賞者小論 ―― 高木加津子小論 ……………… 石崎宏子
◎第28回百鳥賞受賞者小論 ―― 中島伸也小論 ………………… 徳永真弓

◎特集《自註現代俳句シリーズ『石崎宏子集』》
     総論 ………………………………………………………… 平田倫子
   一句鑑賞 ……… 牛田修嗣(「香雨」)・土田芳樹・松野慶子・秋山寛
            甲斐のぞみ・高木加津子・平岡千代子・森田佳代子

◆俳句の共感覚 ―― 芭蕉を中心に現代までを探る 第1回
           〔長期連載〕………………………………… 望月清彦

◇百鳥こども俳句 …………………………………………………… 山根繁義選

◆2か月競詠 〔特別作品〕 ……………………………… 小園公實・西石蕗
   競詠評 ………………………………………………………… 宮沢美和子

◆現代俳句月評〔総合誌掲載作品鑑賞〕 …………………………… 川原瀞秋

◆今月の本棚 ―― 能村研三句集『神鵜』〔書評〕 …………… 中村昭義
◆探鳥1 〔同人作品鑑賞     ―1月号〕 ………………… 中山世一
◆探鳥2 〔雑詠5句欄鑑賞    ―1月号〕 ……………… 中條ひびき
◆探鳥3 〔雑詠2・3・4句欄鑑賞―1月号〕 …………………… 冨迫翠

◆飛鳥集 〔テーマ別募集作品 ― 牡丹の芽〕 ……………… 上野澄江選

◆百鳥集 〔雑詠〕 …………………………………………………… 大串章選

◆百鳥の俳句〔雑詠選評〕 ……………………………………………… 大串章

◆3月号句会案内