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◆鳳声集(同人)秀句

◆鳳声集(同人)秀句

泉に手浸し若さを競ひし日      比田 誠子

八月や忘れぬ笑顔そのままに     中村 昭義

パレットに涼風の色溶きにけり    石﨑 宏子

月光を病室に入れ髪洗ふ       久保田哲子

荷を置いて滝に背筋を正しけり    平岡千代子

万緑に生れ万緑に身罷りぬ      不破 秀介

大瑠璃や一軒宿への渓の道      大和あい子

大瀑布時空をこゆる響きかな     安宅 弘子

虫干しの遺品の中にかたもみけん   井口三千子

大叔父は獄舎に在りし終戦日     入谷 一舟

首の汗拭ふや瀬音清かなり      大河内愛明

引揚げの夢に目覚めし終戦日     太田絵津子

広島忌語り継ぎゆく絵本かな     甲斐のぞみ

この道は空へと続く葛の花      桂 有梨子

生身魂歓喜の歌を独逸語で      鎌倉ひろし

剣舞の稽古板間に汗散らす      菅野 啓子

こぼるるは光の重さ草の露      木下 涼薫

外国船絶えし港や晩夏光       小出  功

林火忌の花火の遠き音ばかり     小林とみゑ

ふるさとの分厚き村史星月夜     斎藤ひでを

夏の夢袋小路に迷ひけり       高田 洋子

落蟬を拾ひテニスの始まれり     髙橋 喜和

サーファーと競ひて鳥の飛び立ちぬ  竹内 香代

初蟬や位牌書く手をふと止めて    竹田 惠示

茶師といふ表札のあり鳥渡る     多田 三子

蒲の絮遠く真白き帆船かな      田中 陽子

コロナ禍に始まるニュース今朝の秋  田辺 厚枝

林火忌や萩の揺れゐる路のぼる    土屋 明子

戒名の法雨や姉の忌は喜雨に     寺尾 恒子

貯木場へつづく片蔭蔵の町      寺松美代子

車より水着降りくる湖畔かな     西  石蕗

合はす手に刻まれし皺終戦日     羽嶋 小鼓

終戦日進軍喇叭遺されて       久松 久子

何時までも灯る家々盆の月      平野きらら

星涼しプラネタリウム観たるあと   広瀬 公子

外地での終戦思ふ卒寿かな      前田 倫子

朝ぐもり喪服の人と乗り合はす    水野 幸子

草の名を母に教はる花野かな     宮川 鈴子

アコーディオンの兵士の記憶敗戦忌  宮島ひろ子

刹那てふ常しなへあり原爆忌     望月 清彦

朝顔を数へて今日の始まりぬ     森 加名恵

渓流の石の百態川とんぼ       薬師神和美

秋燕万葉の野の晴れ渡り       山本あかね

被災地の長き九年や流燈会      渡邊  茂

◆百鳥集(会員)巻頭句と選評

  特攻の兄を語りて盆の月  曽我喜代

 この「特攻の兄」は喜代さんの兄上であろうか。喜代さんは先日卒寿を迎えられたから、太平洋戦争の頃は十代の少女、特攻隊のこともよく覚えておられるだろう。私は当時6、7歳だったので、特攻隊のことは何も知らない。しかし、軍歌「加藤隼戦闘隊」だけは覚えている。「♪エンジンの音 轟々と 隼は征く 雲の果て~」という歌である。知らず知らずのうちに軍国少年になっていたのだ。おそろしい。

 因みに、「特攻隊」とは〈特別攻撃隊の略称。特に、太平洋戦争中、体当り攻撃を行なった日本陸海軍の部隊〉(広辞苑)のこと。「体当り攻撃」が痛ましい。こうして多くの特攻隊員が尊い命を失った。掲句の「特攻の兄」は無事帰還されたのだろうか、それとも無念の死を遂げられたのだろうか。再び戦争をしてはならない。(大串章)

◆今月の主な内容

◆山河逍遥(142) ―大串章の一句― 〔主宰作品鑑賞〕 ………… 望月周

◆今月の名句 〔秀句抄出〕 …………………………………… 山本三樹夫抽

◆「岐 路」〔主宰作品〕 ……………………………………………… 大串章

◆短詩燦々・季節の色鉛筆(78) 〔エッセイ〕 ………………… 清水哲男

◆鳳声集(一)〔同人作品〕(自選)
◆鳳声集(二)〔同人作品〕(主宰選)
◆鳳声集秀句 ………………………………………………………… 大串章推薦

◆よろしく ― 奈良吟行句会・関西百鳥吟行の会 〔句会紹介〕
                      ………………… 中條ひびき

◆百鳥作品評 〔主宰・同人作品鑑賞―9月号〕 ………………… 安里琉太(銀化・群青)

◆自句のほとり(127・128)〔同人自句自解〕……… 長野靖子・長浜よしこ

《斉藤明子句集『初明り』特集》
 ・総論 ………………………………………………………………… 松内佳子
 ・一句鑑賞 ……………………… 相川幸代・秋山寛・江坂衣代・岡林稲甫
                 菅野啓子・谷口裕・中川英子・水野幸子

◇百鳥こども俳句 …………………………………………………… 山根繁義選

◆2か月競詠 〔特別作品〕 …………………………… 池田華甲・中村晋子
   競詠評 ………………………………………………………… 大和あい子

◆現代俳句月評〔総合誌掲載作品鑑賞〕 ……………………… 池田ブランコ

◆今月の本棚 〔書評〕― 河原地英武句集『憂国』……………… 不破秀介

◆探鳥1 〔同人作品鑑賞     ―9月号〕 ……………… 山本三樹夫
◆探鳥2 〔雑詠5句欄鑑賞    ―9月号〕 ………………… 毛利晴美
◆探鳥3 〔雑詠2・3・4句欄鑑賞―9月号〕 ………………… 杉本今子

◆飛鳥集 〔テーマ別募集作品 ― 十一月〕 ……………… 平岡千代子選

◆私の好きな季語(71)― 山茶花 ………………………………… 安室敏江

◆失敗しない文語文法(23) ……………………………………… 楢崎美和子

◆百鳥集 〔雑詠〕 …………………………………………………… 大串章選

◆百鳥の俳句〔雑詠選評〕 ……………………………………………… 大串章

◆11月号句会案内