◆今月の主宰作品


◆今月の主宰作品
■土筆の声 大串章
麦踏みの歌も故郷も遥かなり
ふるさとの山河を歌ひ卒業す
卒業子見送り教師立ちつくす
飛行士に憧れし日や春疾風
春帽子世界一周すると言ふ
鎌倉の余寒に虚子を偲びけり
白鳥と鴨と帰る日惜しむごと
鳥帰る森にあまたの鳥残し
春浅し日向に山羊の繫がれて
(成田参道 三橋鷹女像)
杉の花鷹女は何を嫌ひしや
身じろがぬ和服の矜持風光る
梅古木花の咲く木と咲かぬ木と
初蝶の水琴窟を聞きに来し
人影は李白か杜甫か梅真白
空港を間近に春田打ち続く
絶え間なく爆音よぎる春田かな
畑を打ち橋を作りて里に住む
雪山を見上げ畦火を放ちけり
雲となり霞となりて野焼きかな
春荒れに挑むこの世に挑むごと
畦道に坐り土筆の声を聞く
墓原の土筆摘まずに帰りけり
涅槃西風この世に生れしこと嬉し
春月を見上げ山廬を思ひけり
火の島を飛び越え鳥の帰りゆく
引鳥に己が引きどき思ひけり